2012年1月2日月曜日

ドイツ・ウィーン研修 レポート



ドイツ・ウィーン研修 レポート
 () Arch 5
小俣光一

エコ・環境先進国



ドイツ全国にある古い中心都市の街並みの中にはLRT(ライト・レール・トランジット)が、必ずのように走っている。中心部には一般車両も入って来ているので、一見するとパーク&ライドが実施されているか、確認しにくい。しかしながらそのルールは確かな物で、ドイツの人々には当たり前のこととなっている。



アウトバーンでは、燃費と目的を考えて、2車線~4車線の車道をルールと安全性を守って秩序ある走行が行われている。日本のように、高速道路の左側走行車線から追い越したり、走行車線が空いているのに長く必要以上に、後ろから速い車が来ても追い越し車線を走り続ける光景は、ドイツにはない。この後でも述べるが、ルールを守る事から始まるエコ対策も重要である事を多く感じる。



 ドイツのアウトバーンを時速150㎞/h程度で走っていると、1時間程度で3カ所くらい大規模な風力発電のプロペラ群を見かける事となる。フライブルグ郊外住宅開発団地や他の地区での新規住宅開発団地では、かなり太陽光発電パネルを設置している。大型オフィスには、ガラス張りのファサードとダブルスキンの開口部が多く採用されている。その意識レベルの違いは、明らかに環境における総事業数で日本を上回っている。設備において、何かのテレビCMで「環境先進国ドイツ」という言葉をよく耳にする。どの部分で先進国なのかは、かなりの議論が必要と考える。本当の意味で効率のよい無駄の少ない環境技術の開発は、日本の方が進んでいるかもしれないのだ。暗く寒い、厳しい環境のドイツにおいて最新技術で、全てが解決できないことをドイツの人々は自覚している。日本では、「技術が最先端で、一番でないといけない。」と、絶えず目標を高く設定している。




 HPPというケルンの設計事務所のチーフデザイナーが言った。我々が、「環境を意識したもっともエコロジカルな建築行為とは、何ですか。」と質問した。彼は、「美しい物・良い物を設計し作り上げる事だ。」というのだ。技術は日々進歩している。昨年まで最良だったことが、今年は極悪になっている技術の進化が、時としてある。技術を追求した「エコを中心とした建物づくり」を行う事も重要だが、時代に左右されない最も美に利用し続けられる事となる。そして、長く建築を使う事で、環境問題に答えられる事になるのだろう。

現実に建物の再利用やコンバーチブルなど当たり前のように行われており、その手法は様々である
● 外壁のみを残して内部を使いやすいように作り替える。
● 柱・梁・床のみ残して外壁や動線計画・空間構成を全く変えてしまう。
● そのまま建物を残して内装仕上げを変える。

スクラップ&ビルドが再開発ではなく、空間の再開発として使える物は使い、現在の需要に合わせる開発を行っている。改めて、環境保全・環境対策を考え、建築において何が出来るかを日本においても考え直す必要があると思われる。

 ドイツでの最新のオフィスビルの紹介事例に度々取り上げられる物件がいくつかある。バイエル社コンツェルンツェントラーレ製薬会社のオフィスである。木々に囲まれた環境豊かな場所である。夏場には夜の涼しい空気を自動的に取りこむ事で昼間の冷房負荷を少なくするクフがされている。また必要な時に開口部を開ける事で自分の好きな環境にする事もドイツ人ならではの考えである。





 もう一つのビルは、日本で言うと政策銀行のような組織であるドイツのKfW銀行本社ビル(ドイツ復興金融公庫)である。1970年代新築から80年代・90年代と今回の高層棟増築と複数の増築改築を繰り返し最終形に至っている。それぞれに環境に配慮した設備を取り入れその説明が各所に表示されている。設備だけでなく建築空間的にも環境に配慮された部分が多く、日本の環境対策がいかに子供じみた事かとレベル差に愕然としてしまう。何が日本と違うかについてだが、環境によい事が多ジャンルにまたがった事場合において、それぞれが具体的提案を行い関係者がゴールに向かって合理的な物へと実現していく。






 換気のための窓をエアコンと連動させるなど、ブラインドのスイッチもまとめて全てを集中コントロールする。各部屋の入り口付近にセンサーを組み込みコントロールセンターでも確認し最適な環境を作る事が出来るように建築設備が一体で物作りを行っている。







 ドイツでも環境配慮のための太陽光発電は、かなり多く利用されている。しかしながら、冬の天気の悪いドイツでは冬は発電しない。設置者に聞いても、「何かまずいですか?」と、逆に聞かれてしまう。

風力発電も同じである。設置箇所は、日本など足下にも及ばないくらい多くの風車を見る事が出来る。しかしながら、何時も絶えず風車が回り続けているわけではない。おそらく、設置する事においてイニシャルコストを重視しているのではなく、どれだけの環境への効果があるかを重視して、それぞれの環境技術を使いこなしているのだろうと感じられた。
まず出来る事を一つ一つ行っていく。焦らずに環境に最も良い事を出来る事から始める。しかしながら環境によい事を行ったら必ず政府や行政が、支援や補助・インセンティブを与える。更には、安全性についても多くのケーススタディーを行い危機管理に対して日本など比べものにならないほどの基準を定める。日本のようにある一定の数値をクリアーしていたらぎりぎりでも良いと言う考えはドイツでは通用しない。開発に関しても日本ではいつの間にか、開発者負担の比重が減ってしまっている。事業性を重視して経済の活性化をお題目にしてしまったからだ。お金がかかる分、事業計画期間を見直しそれに似合った品質の高い土木工事や建築を日本では考えられなくなってしまった。日本では公共性の高い建物や寺院が、ほとんど伝統的な重厚な木造から鉄骨やコンクリート製になってしまった。今回の大災害でも古い寺院が残り、地域の避難所となった話は少なくない。






日本人は、部屋がまぶしいほど明るい事を好む。エアコンを真夏に厚着をしなければならないほどギンギンかける。一方で加湿器をフル回転させる。天気がよいのに部屋の中でテレビやゲームを行う。日本は湿度が高い事を理由にエアコンを多用しているが、多少イニシャルは高いが、環境や人体によい空調方式は他にもある。環境や人に優しい建築が、今後の日本を経済的にも良くするだろう。  - 完 -
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